さよなら幽霊ちゃん_01(sugar.)

激推し作家sugar.氏の初単行本が出たよ。

↑書影!かわいかろうが。

この物語は3人の幽霊部員と1人の幽霊が涙あり笑いありの高校生ライフを満喫するドラマで、サスペンスだ。いや嘘はついてねえ。たぶん。

 

まず絵をご覧。折角書影の出るAmazonのリンクを貼ったんだから穴が開くまでご覧。幽霊のゆうちゃん、ソリッドでミニマルなkawaiiを追求し続けてきたsugar.氏の現状での到達点と言えるめっかわゲロカワ鬼キュートキャラに仕上がっている事がこの1枚からも感じてもらえると思う。

このタイプじゃないkawaiiの引き出しも多いしそれは読んでいただければいっぱい浴びる事ができます。ワオワオって言っちゃうよ!マジで!

 

物語は主に(ここ20年で完全に確立されたと言ってもいい)(二次元版フルハウスないしやっぱり猫が好きとも言い換えられる)なんやカワイイ子らがわちゃわちゃ集ってしょーもない掛け合いを応酬するあのスタイルで進む。

元々テンポ早めの人だったんだけど本作では加速度が異常、ひとコマ内で4コマの起承転結ネタを圧縮コラージュしてオチがシームレスに次のコマに進む、みたいな有り様。忙しすぎて変な汁出てくる。と思いきや抜くトコではスッ……と抜いてきて慣性でブッ飛ばされる。笑いのジェットコースターって言葉があるけど、完全にアレです。

掛け合いのネタが「今日の天気」レベルに前提知識を要さない易しい笑いである事、オタク漫画ストリームの中では結構異常だと思う。ノリがすっごいだけでネタは万人向け。さてはこれオタク漫画じゃないな?(どうでしょう)(※ゲストの城田先輩のアレ除く)(あれは比較的ハイコンテクスト)

 

そんな日常が本当に楽しくて、これはそういう漫画なんだな……と思って気を楽に構えて読んでいると、死にます。もう一度言いますがこれはドラマで、サスペンスです。

どうやら(どうやらというのは現時点でいまだ見えていないものがいっぱいある)この物語には伏せるべくして伏せた幾ばくかの真実があり、彼らは薄氷の上で日々を踊っている。それはゆうちゃんの実存のように荒唐無稽なものかもしれないし(何しろ彼女はマジの幽霊)、あるいは誰の幼年期にも訪れたようなありふれた危機なのかもしれない。

彼らはやや内向的で抱え込みがちなちょっと難儀な高校生だし、どうにも生徒を扱いかねてる新任教師にもおっかなびっくり見守られてるし、きっと何が起こってもおかしくないんだと思うよ。「そういう空気をしっかりと漂わせている」。

目が離せないんです。謎とか考察とか、そういう話ではなく、シンプルに「心配だから」。

 

作者は「謎解き」を趣味としており、趣味が高じてライフワークに片足突っ込みつつあります。SCRAP社(社?)のプロダクツを遊び倒し過ぎて目をつけられPR漫画をしばしば描かされててあれは面白いです。いずれガッチリ企画から噛んだ製品出るんじゃないかなー。

……何で今こんな事書いたかって?

隠れてるんですよ。たまに。

単純に構成がうまいというのはあり、今回単行本化に際し読み直した感じだと「あっこれ前の話の」みたいな驚きもあります。配置や配色、間違いなく漫画として「クレバー」で「読みやすい」。んで、そういうのじゃないダイレクトなやつが。うん。

これ以上は書けないというかこの項は書いた時点でネタバレみたいなモンなんですけど(この本には叙述トリックがあるよ!と喧伝するようなモンなので)、それでも「これは本筋ではない」し「スルーされるともったいない」ので、書いた。まあ帯に謎って書いてあるくらいだし、いいだろ。きっと。

 

御託を並べましたが要はヤバいので読んで。これはね。間違いのねえ漫画です。

どうやら芳文社の公式ページは配送無料のサービスが複数選べる親切設計なので好きな会社を選ぼう。↓

houbunsha.co.jp

23日追記。謎解きの存在が解禁となった(解禁もクソもない)(神様は何も禁止なんかしてない)ので、以下twitterでの補足の転記。

単に謎を仕込んだだけ、ってわけでもないんです。読み込みと解釈でも到達しうる「裏面」に、謎を解く事でダイレクトに対面してしまう羽目になります。

いくらかの手作業を経て「体験」する行為によって用意された事実への没入感が高まり、単にそれを知っただけでは届き得ない感動を得てしまう。漫画を読むという行為の外から揺さぶられるわけです。脱出ゲーム系の謎解きジャンルの面白さってこれか!と驚くと共に、裏のメッセージが過剰に心に入ってくる。

たぶんこれ、その効果を誰よりも遊び倒して知ってる作者が、わざとやってるわけで、罠なんじゃねえかな……と今は私見しています。色々とここまでもこれからも「漫画的な仕掛け」を縦横に張り巡らせている、にも関わらず、いわば完全な裏技をも用いてくる。 このメッセージに飲まれるべきか否か。まだ考えてますよ。

それはそれとして、素晴らしい手腕。超親切な解答編が届けられる前に読み解けた人は幸いなり。