水神様がお呼びです あやかし異類婚姻譚(佐々木 匙)

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さささんの完全新シリーズ新作が丸々一冊書き下ろしで刊行される報があり、ずっと心待ちにしていたわけですが。

めっちゃ良かった。

柔和な序文に驚いたあとに始まる女子主観の本文、この形式は長編では初めての試み?(がら猫は結構俯瞰混じりだったし)と二度驚きつつ。これ軽妙にぽこぽこ話が進んで、テイストはいつもの感じなのにテンポというか刻むステップが全然違う。新しい心地よさ。手法単位でこうも新しいモンが来ると思ってなかった。

 

じれったい幼なじみな2人の運命は!? 
クスッと笑えて優しく切ない、和風ラブファンタジー。”

このアオリ何じゃいって最初感じてたんですけど読んだあとだと「あー」ってなりますね。あらすじとして開示できる事ってこれくらいしかない。読み味を削いで内容だけ説明すればそうなっちゃうってのもあるし、これ以上は書いちゃ駄目ってのもある(書いちゃ駄目パートに関しては下に畳んでおきます)。

いろいろあってのラスト、ビターですね。あんな事も!そんな事も!書いちゃうんだ!という驚きもありつつ。まんぞく。お薦めできます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この小説、宣伝文句に反して(反してって事もないけど)隠されたカードをどんどんめくってゆくそのうまさが一つの肝になってる。こういう驚きをさささんに求めてきた事がなくてここらへん逐一ノーガードで全部モロに喰らったんですけどこれ、めちゃめちゃうまくないですか。違和感の種は「言われてみれば」みんな最初からそこにあるんだけど、初読ではどれも違和感というより少しの不快感、あるいは「そういう描写もするのか……」という苦み走った読み味、そのう、スパイス的にですね、流しちゃう、そーゆーさじ加減に、仕上がっていまして。

そして別におらーっどんでん返しじゃーっ!的な事やってるわけじゃなくてちゃんと順を追ってほどよき段取りで開示されてゆき、いちいちおののかされてしまう。こちらの感情のうねりそれ自体とは別に、気持ちよさがずっとあった。こういう読書体験あんまし記憶にない。掘って来たジャンルが違うだけなのかなー。ともあれ得難いものでした。